三橋達也氏インタビュー 14
純情な新珠さん(1)
三橋

日活で僕の相手役は、まず北原三枝だけだった。
それから月丘(夢路)さんが後から来たんです。
その二人は同じ松竹(からの移籍)で
(移籍前の会社と)同じ顔ぶれじゃないか、
新鮮味がない、ってわけです。だから、
三橋の相手役にっていうんで(新珠くんを日活が)
宝塚から引き抜いたんですがね。
何しろね、宝塚のお嬢さんスターだった人でしょ。
ものすごく大事にされていたわけだから、
ツンツンしてしょうがないんで、ふざけてね。

『青空の仲間』 (1955・日活) ってシャシンが
あったんです。これはね、獅子文六さんの
ユーモア小説が原作なんですけど。
僕と伊藤雄之介の二人が、電線工夫なんです。
その電線工夫が食事に通ってる食堂の娘が、
新珠三千代なんですね。伊藤雄ちゃんは
伊藤雄ちゃんで、だれか恋人がいる。
その2組の話なんです。

まだシャシンが入る前の宣伝スチールを撮る時ね。
入って直後かな、2、3日したところで。
そしたら、伊藤雄ちゃんが
「ありゃお前ね、われわれがやってやんないとダメだ。」
「何だ?」って言ったら、
「カタくてカタくてダメだよ、あれ(新珠さん)は。
もっとね、イキがこう通じ合わないとダメだ。
ほぐしてやったほうがいい。」
「そう?どうしたらいいんだい?」って言ったら、
「さあ。例えば、オッパイ揉んじゃうとかさ。」
なんて言うわけ、伊藤雄ちゃんが。
「そうかそんなことしていいのか。」
「いいよ、じゃ今日やってやろうよ。」

で、宣伝スチールでね、新珠くんを真ん中にして
電線工夫の二人が囲むような写真を撮った。
そのとき、スチールが終わった時にやろうって
約束になってて。一、二、三、パッで
両方からオッパイさわろうって話だった。
一、二、三、パッで、つかんだの僕だけだった(笑)。
雄ちゃん、つかまない。それで伊藤雄之介、
ころがって笑ってるんです。

新珠くん、気がつかないんですよ、その時。
そのくらいあの人、純情だったんですね。
「どうしたの?どうして伊藤さん笑ってるの?」
って言うわけ。よしゃあいいのに
伊藤雄之介は言っちゃったんですよ。
「まあ、達ちゃんは淋病だよって。
こうこう、こう言ったらホントにさわった。」
それから(新珠さん)怒っちゃって。もうそれでね。
ひと月くらい口きかなかった。

前へ戻る | 次へ進む

目次に戻る