僕が覚えてるので、一番ひどかったのは『赤信号』のときね。
ちいちゃな飲み屋のセットがあって、
その屋根裏のこんなところへ、
二人で住みついちゃうわけですからね。
(僕の演じる)亭主の方は
何もすることがないでしょ。
昼間からぶらぶらして、せんべい布団で
夜早いうちから寝ているわけですよ。
店が看板になってから、新珠(三千代)くんが
「じゃ、お疲れさま、おやすみなさい。」
なんて言って。
トントントンって、階段を上ってきて。
天井が低くて、コーンなんて頭をぶつけるんですよ。
帯をほどいて長襦袢になって寝るんですが、
寝るとね、自然に僕の腕がスーッと出る。で、僕が
オッパイをさわるっていうとこがある。
ところが、オッパイなんてさわれないですよ。
ここまでいってね、撫でてるような格好をすると
(川島監督が)「ダメだ。」って言うんですよ。
ちゃんとさわれって言うわけですね。
お昼休みになっちゃって、食事のときに
今平(今村昌平)が僕のところに来てね、
「達ちゃん、オヤジ(川島監督)が怒ってるよ。」
「何、怒ってるんだ?」って言ったら
今平が(川島さんに)言われたんですね。
「きょうは ”踊る達ちゃん”が踊らない。
ちょっと、お前行ってこい。」って。
僕は言うと何でもやってみせるもんですからね、
”踊る達ちゃん”なんてあだ名をつけられてたんですが
「”踊る達ちゃん”っていったって、ダメだよ。
きょうは相手が悪いよ。」
実は、前にちょっと、(新珠くんに)悪いことをしたんです。
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