三橋達也氏インタビュー 13
川島監督の演出術(3)
三橋

僕が覚えてるので、一番ひどかったのは『赤信号』のときね。

ちいちゃな飲み屋のセットがあって、
その屋根裏のこんなところへ、
二人で住みついちゃうわけですからね。
(僕の演じる)亭主の方は
何もすることがないでしょ。
昼間からぶらぶらして、せんべい布団で
夜早いうちから寝ているわけですよ。

店が看板になってから、新珠(三千代)くんが
「じゃ、お疲れさま、おやすみなさい。」
なんて言って。
トントントンって、階段を上ってきて。
天井が低くて、コーンなんて頭をぶつけるんですよ。

帯をほどいて長襦袢になって寝るんですが、
寝るとね、自然に僕の腕がスーッと出る。で、僕が
オッパイをさわるっていうとこがある。
ところが、オッパイなんてさわれないですよ。
ここまでいってね、撫でてるような格好をすると
(川島監督が)「ダメだ。」って言うんですよ。
ちゃんとさわれって言うわけですね。

お昼休みになっちゃって、食事のときに
今平(今村昌平)が僕のところに来てね、
「達ちゃん、オヤジ(川島監督)が怒ってるよ。」
「何、怒ってるんだ?」って言ったら
今平が(川島さんに)言われたんですね。
「きょうは ”踊る達ちゃん”が踊らない。
ちょっと、お前行ってこい。」って。

僕は言うと何でもやってみせるもんですからね、
”踊る達ちゃん”なんてあだ名をつけられてたんですが
「”踊る達ちゃん”っていったって、ダメだよ。
きょうは相手が悪いよ。」

実は、前にちょっと、(新珠くんに)悪いことをしたんです。

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