三橋達也氏インタビュー 11
川島監督の演出術(1)
**** 川島監督は俳優の選び方について
特に考えがあったんですか?
 
三橋 それは特に川島さんだからということはないと思いますよ。
誰でもみんな、監督には自分の好みがありますからね。
 
**** 俳優の扱い方について、他の人と
違っているところはありましたか?
 
三橋

うーん、特にはないと思いますが・・・。
ただ、川島さん、ああいう人ですから、
大変おしゃれでもあるしねぇ、
粋なところの分かる人でしょ。
ですから、そういうことの理解できる人となんか話が合う、
ということはありました。
だから、例えば小沢昭ちゃんなんかね、
小沢昭一なんか、あれは俺が好きな俳優なんだよって、
僕に言ったことありますよ。

『洲崎パラダイス 赤信号』のときのそば屋の出前ね。
新珠(三千代)くんが、そば屋で働いている僕のところへ
よりを戻したくて来るわけですね。
ノレンから下、足しか見えないわけです。
で、待ってるわけです。そこに芦川いづみがいてね、
ちょっとヤキモチ焼いたりなんかして
やっているわけでしょ。そこへ自転車が着いて
出前持ちの足が見えるんで、新珠くんが
僕だと思って立ちかけると、唄をうたいながら入ってくる。
あれはおかしくておかしくて、
みんな笑ったんですよ。
あれは全部小沢昭ちゃんのアイデアですからね、
唄をうたうって事とかね。
 

**** 今、話に出た新珠さんとか、川島さんが撮ると
他の人に比べて女優さんがより目立つというか
その持っているものを引き出してしまうという・・・
 
三橋

一時、そういう話は巷間、伝わったことがありましたね。
女優を新装させるというか、生まれ変わらせるとか、
そういう監督だなんていうね。ま、偶然なんですけどね。

例えば、月丘(夢路)さんが松竹にいた時より
こっち(日活)に来たら良かったとか、
北原三枝が(日活に)来て良くなったでしょ。
そういう事もあって、川島雄三っていったら
女優の新しい面を見いだしてくれる監督だ、
みたいなことはありましたよ。

特別にね、なんか演技指導をしてるとかね
そういうところはあまり僕は見なかったですね。

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