**** | 最後にお聞きしたいんですが、 三橋さんは、いろんな映画会社を渡り歩いてきて、 黒沢さん、成瀬さん、稲垣さんといった いろんな監督と仕事をされてきましたが、 川島さんが、今まで出会った監督の中で 際立って違うところは何ですか。 |
三橋 | そうですねぇ・・・。 そういう人たちと違うのは、非常に世俗的なことね。 それが黒沢さんにしても、 成瀬さんにしても、稲垣さんにしても、 川島さんが持ってた、いわゆる世俗的なことは 持ってなかったと思います。 |
**** | どの辺で特にそれを感じられますか。 |
三橋 |
つまり女の、早い話が銀座の女の生態とかね。 成瀬先生なんかそういうものをやってましたよね。 |
**** | じゃあ、同じ水商売を描くんでも 成瀬さんはドップリつかってないで あくまで、ある範囲内で見てたと。 |
三橋 | いわゆるこっちから観てる、傍観者としての 立場で見ていたような気がするんです、ぼくはね。 だけど川島さんは、自分がその中に 入っちゃってるような気がする。 そのくらい、視点が違うような気がする。 |
**** | だから水商売での女の反目、 たとえば、女のけんかのシーン みたいのはうまいですね。 |
三橋 | そうかもね。だから若尾(文子)くんの、 『女は二度生まれる』 (1961・大映東京) かな、 芸者のあれなんかを見ると、特にそうだね。 |