三橋達也氏インタビュー 19
「幕末」に出演しなかった訳(1)
**** 「おまはん、来てくれ」と言われて
日活に来た三橋さんですから、日活の
川島作品には全て出てるんですが、
『幕末太陽傳』 (1957・日活) だけは
事情があって出演していませんね。
でも、スタッフとしては参加しているという・・・
 
三橋

スタッフみたいなことはしてませんけど、
たびたび慰問に行ったりね。
それから、これは高村さんがバラしちゃったんですけど。
品川の土蔵相模のところのロケ(『幕末』のプロローグ)
があったんです。その時、向こうに外車が走りたいって
言うんで、僕が車の運転をして走ったんです。

事情を話しますと、僕とプロデューサーとの、
日活における俳優の扱いについての約束があったんです。
それを、ま、こっちが我慢して、こうこう、
こうだからっていう条件をまげてね。
埋め合わせはいつかするみたいな事が
全然なくて、その返事が全然なかったんですよ。

それで頭にきてね、
僕は台本を書いている川島さんのところへ行って、
「今度は勘弁してください。」と。
その時聞いたら、
「ホンのちょっと付き合ってくれよ、高杉晋作の役で。」

本当だったら、「ああ、いいですよ」
ということだったんですけど、そういう事があったんでね。
あと、むこうがその事での受け取り方が非常に悪くて、
「あの野郎、生意気になりやがって。」
っていうようにとられると、困るって気もこっちにはあった。
だから、できるだけ現場に慰問に行ったり、
こっちが暇なときは監督を車で送り迎えしたり。
夜間ロケで、左幸子が入水するシーンなんかね、
月島の先でやっているときなんか、随分おそくに
夜食を持っていってあげたりね。

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