三橋達也氏インタビュー 17
今平と川島さん(2)
**** 井手俊郎さんと寺田信義さんの手で
その原作をスリムにした脚本に、川島さんは
さらに手を入れたみたいですが、娼婦で
あったことはかなりボカしてますね。
 
三橋

その辺がね、ちょっと曖昧になっちゃったのが
具合悪かったのかもしれません。
今平なんか、そういう点が気に入らないでしょうね。

一番最初にバスを降りてから、新珠くんが
こう行きかけるんですね、遊廓の方へ。
もう、食うコレがないわけですから。
「しょうがない、私行って来るよ。」みたいな
気があって行くわけで。それを一生懸命止めて、
「おい、行くな。また、元の黙阿弥じゃないか、
元に戻っちゃうじゃないか!」って言って、
引きとめる。

もみあいしてて、彼女が振り切って行こうとすると、
パッとあの「洲崎パラダイス」っていう
ネオンサインが点いて、そこへ真鍋さんが
作曲してくれたボンゴのラテンの響き。
大変よく効いているいいシーンですけど。
だからそれが出てないと、昔に戻っちゃうじゃないか、
というのが生きてこないわね。
 

**** でも、そこらへんを言葉ではっきり出さずに
ボカしたところが、かえって映画としては
雰囲気が出たと思います。映画の最後の方で
轟夕起子さんの女将が、あの人はある娼館に
居たらしいという話をしてましたが。
 
三橋 その前にね、娼婦たちがガヤガヤやっているところを
新珠くんがすれ違って、振り返って
「あれ?××に居た娘じゃない?」というのもある。
だから、否定はしてないんですよ。
否定はしてないからね、それだったら
むしろハッキリした方がよかったかもしれない。
娼婦上がりってことを。
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