珍しく順調に休みがとれて、高田馬場ACTミニシアターでの川島映画特集に何回か通うことができた。川島探検には乗り出したばかりで貧弱な感想ばかりですが、自分自身の記録として書いてみました
「グラマ島の誘惑」
初見。ずっごくオシャレ。森繁とフランキー堺の皇族軍人ブラザースのョーロッパナイズぷりが傑作。のっけから「あ、あれはアルバトロスだわ」だもの、驚いた。脚色川島雄三の皇室内カルチャーに対する考察ぶりが興味深い。皇室というより細川さんの世界だが。今時はこんな風に皇族をギャグにできる人もいないし、時代の空気もない。
皇太子(現天皇)と美智子さんの結婚の時期に作られた映画か、二人を描いたオリジナルな壁面や羽子板があったり、女優たちが孤島で果物を捧げもつ場(画)面が、まるで関根正二の『信仰の悲しみ』そのものであるところなど、小島塞司という人の美術がとくにオシャレだった。こういう映画がすきなんだ。
「貸間あり」
初見。登場人物達の熱気。おたがい触りまくりコケまくり全く騒々しいのに、突然「サョナラだけが人生だ」だもの、熟くて同じだけ凍っている。
口ハコの問題だろうか。人や金が出入りする口場所を自分自身にナゾらえると、そこに空虚の風が吹く。人間口ハコ説。フェテッシュな賃間札の主は、小金治よりもやはりフランキー堺が演った方が、貸間札がカラカラとよく回ったような気がする。(山茶花究が演ったらホラーになったかも)
フランキー堺の先生は、淡島千景から結局遂に逃げ切ったんじゃあないだろうか、と女としては一抹の不安を感じました。(ィヤ、きっとそうだぜ。)
小島基司氏の美術に注目。淡島千景の造る陶芸作品が50年代ァートしている。時々出てきた画廓もまた口ハコです。
「雁の寺」
初見。美人の友達と一緒に見にいったのだけど、彼女は三島坊主に死なれた若尾文子が今度は誰に面倒みてもらえるのだろうかど、そればかり気になって落ち着かなかったそうだ。わたしはというと、ついマイナーな奴(慈念)に肩入れしてしまい(うぬら三島坊主、いつか仕返ししてやる、の魂)になってしまい一一慈念君を、たとえ罪は犯していても、一瞬でいい、最後に神々しく薄かせてやりたかった。あんなコワイ顔のアッブで消えるなんて、ちょっと許せない気がずる、が、そうか、ここで甘くないのが川島流なんだよね。
とても不穏な白黒の色調で、慈念には糞尿ひっかけられそうだったし、本当に生理的にキツい映画でござんした。
他に『女は二度生まれる』『青べか物語』『しとやかな獣』を見ることができました。どの映画も山茶花究がステキ。こわい。『青べか物語』の森繁には「何気取ってやがんでい」と反発しましたが、『グラマ島の誘惑』そして『暖簾』の仏壇前の足技など思い出して、遅れ遅ればせながら大ファンになっちまいました。今の森繁がいくら呆けていたって全然関係ないわ。『夫婦菩哉』を見ます。それから美術・小島基司の仕事を追いかけて、古い日本映画を見続けようとおもいます。
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